WORKプロジェクトストーリー

−ものがたりができるまで−

Project もったいないばあさん

社内の連携プレイで
人気絵本シリーズが
社会を動かした一部始終を、
プロジェクトの発起人がご案内!

INTRODUCTION未曾有の事態を
逆境に!
チームで作り上げた
ムーブメント

このものがたりの本当の始まり……それは、僕が大学時代に4ヵ月間インドを放浪し、カオスな世界観の虜になったことから、かもしれません。入社後も「インドや世界で何かできないか」という想いが、ずっと心に。
時を経て、弊社刊行の人気絵本『もったいないばあさん』シリーズと出会います。そして環境問題を身近に考えられる絵本の力を生かした、世界的なSDGsプロジェクトを企画。温めていた夢が動き出すのですが、まさかのコロナ禍と重なります。
不自由な状況下ということもあり、苦難の連続。ですが、地球規模で考えるよう皆の意識が変化したり、環境問題に注目が集まったり、外出が制限された子どもたちのケアの重要性を感じたり。プロジェクトの意義を再認識し、追い風になったようにも感じています。

案内人

海外事業戦略部(1989年入社)

1.絵本を世界へ送り出す

「MOTTAINAI」を
万国共通に

KOGA’s eye

急速な人口増加と経済発展による、深刻な環境問題を抱えたインド。そんな状況への働きかけとして、JICA(国際協力機構)から資金を調達し、2016年に環境・衛生教育を目的としたインドでの絵本の読み聞かせ販売事業をスタートしました。インド版『もったいないばあさん』を出版し、2018年には作者の真珠まりこ氏とガンジス川を訪れ取材。その翌年、真珠氏は水の循環や命のつながりをテーマにした絵本『もったいないばあさん かわをゆく』を創作しました。
『もったいないばあさん』は中国語、フランス語、ベトナム語、そしてヒンディー語など現地の言葉に翻訳され出版されています。ただ無駄をなくすだけでなく、自然の恵み、いただく命、作ってくれた人に感謝する気持ちなどが込められた、日本発の「MOTTAINAI」。その心が今、世界中へ広がりつつあります。

インドの首都デリー周辺を走る「読み聞かせキャラバン」。スズキのインド子会社と伊藤忠インド会社の協賛で2018年から展開。

ヒンディー語&英語版『もったいないばあさん』を手にした子どもたちの元へ、作者の真珠まりこさんが訪印。笑顔からも人気ぶりがうかがえる。

編集者は
「水やり係」兼「伝達係」

幼児図書・海外キャラクター出版部
幼児図書編集チーム
(1994年入社)

作家さんの中にある作品の種へ、私たち編集者はこまめに水をあげるようにフォロー。この“適量の水”が大切。そして双葉を出し、花を咲かせたら、花の魅力を全力で世の中へ伝えます!外国語版の監修やアニメ化するときも、作家さんの目指すゴールへ近づける寄り添いを。

講談社では日本全国をキャラバンカーでまわり、読み聞かせをする「おはなし隊」の活動にも注力。イベントに、もったいないばあさんが登場することも。

2.アニメ化プロジェクトへ

「もったいないお姉さん」
チームの誕生!

KOGA’s eye

絵本の海外事業が目に留まったことがきっかけで、環境省から、作品をもっと世界へ広めようとの提案があり、『もったいないばあさん』シリーズ4作品をアニメ化し、2020年6月から順次、6言語で全世界へ無料配信することが決まりました。この企画は「環境省との共同プロデュース」「国際的なNPOの協力」「企業7社との連携プロモーション」と、国や社会を巻き込んだ、異例ずくめの一大プロジェクトに!
そこで立ち上がったのが、後に私が心を込めて「もったいないお姉さん」と呼ぶことになる、絵本の担当編集者や販売担当者、そしてライツ事業部のパワフルな女性たちのチーム。絵本の世界観を忠実に再現するための、作家とアニメ制作会社とのパイプ役、NPOとの契約交渉役、パートナー企業との連携役など、各担当者の大きな活躍がありました。

2020年6月5日の「世界環境デー」より配信スタート。ジャパン・タイムズや朝日小学生新聞、朝日新聞の天声人語など、各紙で取り上げられるほど話題に。

配信に合わせ、日本語と英語のチラシを制作。森林の環境保全に配慮し、持続可能な木材から作られたFSC認証の紙を使用するこだわりよう。

もったいないばあさんの声として作者がまずイメージしたという、日本語版の声優は、女優の戸田恵子さん。これはその時のアフレコ台本。

クリエイティブとビジネス、
両方向から
アニメ化の実現へ

ライツ事業部(2003年入社)

線の太さや曲線の曲がり具合、動くスピードの少しの違いでキャラクターが別人に見えてしまう、絵本からのアニメ化。膨大な時間をかけて、満足のいく完成度に引き上げました。また、協賛の廃棄プラスチックをなくす活動をするNPOとの契約は英語、そして通常とは違う要素がいくつもあり、契約・経理チームとも打合せを重ねました。このように、あらゆる交渉・調整を行うのがライツ事業部の役割です。

プロジェクトサポート企業との連携もライツ事業部の仕事。全国2万店のセブン-イレブンでの告知(※2020年度の取り組み)ほか、ANAホールディングスやTOTOなど、各企業の特性に合わせたプロモーションを展開。

3.アニメを届ける

百戦錬磨のYouTubeの
プロが効果的に配信

KOGA’s eye

配信を担当するのは、動画事業チーム。2015年から「ボンボンTV」を中心とした複数のYou Tubeチャンネルを運営してきた実績を持つ、動画配信のプロ集団です。
検索にかかりやすいタイトルやキーワード、公開頻度など、知見に基づく配信で、アニメをより多くの視聴者の元へ。本プロジェクトでは、未就学児や小学校低学年、中高生、絵本ファン、国内のアニメファン、海外のアニメファンと、それぞれのターゲットを持つ5つのYou Tubeチャンネルから配信しています。

英語版アニメ『Mottainai Grandma』。各国バージョンを見比べてみるのも面白い!

無限の可能性が潜む、
世界のマーケットへ

なかよし・ボンボン事業部
動画事業チーム(ボンボンTV)
(2004年入社)

今回のプロジェクトのカギになっているインドは、You Tube配信国の中で最大の人口を持つマーケットとして、以前から注目していました。動画配信の視点でもチャレンジになると考えています。刻一刻と流行も仕様も変化する動画業界では、こうした日々のトライが布石に!

You Tuberのいっちーとなるによる、「もったいないばあさん音頭」の動画も配信中。

4.絵本を届ける

アニメ化は絵本を
PRするビッグチャンス

KOGA’s eye

本プロジェクトはアニメを見てもらうのと同時に、日本国内はもちろん、世界各国の方に絵本の存在を知ってもらえるきっかけにもなると考えています。編集、ライツ、販売・宣伝など、違う視点を持つ関係者でどんなアプローチができるかアイデアを持ち寄り、書店店頭とWeb、それぞれで読者に刺さる施策を企画。実際に手に取り、絵の雰囲気を見た上で買われることの多い絵本は、特に書店での施策が売上を大きく左右します。

プロジェクトサポート企業のセブン-イレブン・ジャパンのECサイト「セブンネットショッピング」では、特設ページを開設(※2020年度の取り組み)。絵本全シリーズを購入できる、販促施策のひとつに。

運命の出会いを演出し、
収益を生む仕掛け人

第六事業販売部(2007年入社)

販売部は、本の流通経路の中で社内の最下流。あえて作り手側の感情よりも読者目線で施策を考え、どうすれば数字につながるかにこだわります。目標を立て、各部署から情報収集し、過去の実績を紐解きながら“推し方”を吟味。ロングセラーだからこそ新鮮に映る仕掛けを考えます。

店頭施策ではSDGsフェアを開催。ブルーの帯やPOP、ぬいぐるみで視覚に訴える提案を。店頭でアニメを流せるプロモーションDVDも用意。

5.SDGsを発信する

エンター
テインメントの力で
世の中を変えたい

KOGA’s eye

国連が主催する「SDGメディア・コンパクト」(世界中の報道機関とエンターテインメント企業でSDGs達成を目指す同盟)に加盟する講談社では、『もったいないばあさん』の他にも、女性誌としておそらく世界初の一冊丸ごとSDGs特集号を発行した「FRaU」や、「ViVi」「with」「Hot-Dog PRESS」「おともだち」各誌でのSDGs企画など、積極的にSDGsへ貢献する出版ビジネスを展開しています。
メッセージを“広く深く”伝えられるクリエイティビティの多様性も、総合出版社ならではの面白みのひとつです。

「FRaU」2020年8月号では『もったいないばあさん』アニメ化のニュースを掲載。月に一度のさまざまな部署が集まる社内SDGs委員会で、各メディアの動きを情報共有。

ビジネスにも
持続可能なアイデアを

第二事業戦略部
クリエイティブ・スタジオチーム(FRaU)
(1987年入社)

SDGsへ取り組む企業、そんな理念に共感した上で「一票投じる」ようにサービスや商品を選びたい読者。心地よい生き方を提案する「FRaU」は、双方をつなぐ場にもなっています。タイアップ記事を作るだけでなく、パートナー企業と読者をつなぐコミュニティ作りまで『もったいないばあさん』同様、メディアとしてもサステナブルであるために成長し続けています。

2020年はリアルから場所を移し、パートナー企業や読者のFRaU SDGs会員とオンラインイベントを開催。「♯STAY HOME」時期も、「♯STAY SDGs」のスローガンを掲げ、活動を止めずポストコロナ時代を見据えたSDGsについて情報交換。

※社員の所属部署・肩書きは、2020年8月時点のものです。